2018年1月19日金曜日

母への退職祝い

 女手ひとつで私を育ててくれた母が、ついに定年退職しました。本来めでたい事なのですが、どうしても手放しで喜べない私がいました。

母が長年の社会活動を終えた事で燃え尽き症候群に陥ってしまう心配があったからです。
そんな母に何か出来ないかと、ずっと一人で悶々と考えていたところ、たまたま立ち寄ったペットショップで衝撃的な出会いをしました。

それは、狭いショーウインドウの中で私に腹を見せてスヤスヤ寝ている一匹のチワワでした。
そのチワワは一年前に病気で死んでしまった愛犬にそっくりで、気付くと私は妻を説得し、冬のボーナスを全部使ってその犬を連れて帰り、退職祝いとして母に引き渡しました。

きっとこの犬が母の心を癒し、また生きがいになると思ったのです。

思った通り母はその犬を大変気に入り、体毛の色から
『きなこ』と名付け、毎日のように私の携帯電話に写真を送ってくるようになりました。
退職からしばらく経ち、元気に暮らす母と犬を見てひとまず安堵しましたが、よく考えると私は母の事を一匹の小さなチワワに全部背負わせ、それで満足している事に気付きました。
今までみたいに仕事や家庭を言い訳にして母を蔑ろにしては意味がない、ましてや人()任せにするのはもっての他。
雪が溶け始めたら母と犬の散歩をし、きなこの今後の成長を一緒に見届けられたら良いなと思います。




                                    手術室看護師N